INTERVIEW

田中 拓(総合診療センター、救急災害医療センター)

田中 拓(総合診療センター、救急災害医療センター)

大学病院のリソースを活用しながら
総合診療と救急医療をバランスよく学ぶ

川崎市北部は都市部で人口増加が続いているにもかかわらず、二次医療圏の病床数が不足しているという課題があった。川崎市立多摩病院は救急や専門医療の提供を望む市民からの強い要望に応える形で、急性期医療、小児救急、災害時医療を担う北部地域の基幹病院として、2006年に設立。大学病院が運営する国内発の公設民営病院として注目された。開院当初から総合的な診療ができる医師を多く配置し、現在では総合診療センターが中心となり初期診療を行い、スムーズに各診療科につなぐ体制や重症者は大学病院にも協力を仰ぐ体制を徹底させている。総合診療センターと救急災害センターは責務をオーバーラップさせながら、初期診療における連携を強めているという。救急災害医療センター長と総合診療センター副センター長を兼務する田中拓医師に研修病院としての魅力を聞いた。

総合診療医の役割と立ち位置を重視

当院の総合診療センターは総合診療医だけでなく、院内の内科系の診療科が常駐し、外科系の診療科との連携も取れていることから、大変アクティビティが高く、院内での存在や立ち位置がしっかり認識されているというのが大きな特徴だと言えます。
研修の指導で心がけているのは「まずは診てみる」そして「考えてみる」ということです。例えば、既にある程度の診断がつけられて、「虫垂炎」と紹介された患者さんに対しても、まずは本当にそうなのかどうかを疑うところから始めます。患者さんの情報は開業医、地域のケアマネージャー、看護師、救急隊等、複数の人から入ってきますので、とにかく自分自身で必ず診るように指導しています。現場では研修医と私たち指導者が一緒に考えるというスタンスが多いですね。

大学病院との連携で高度な医療を提供

救急災害医療センターでは、二次救急医療機関として、24時間365日、救急医、内科医が中心となり、地域の救急対応を行っています。登録されている近隣の開業クリニックから紹介された患者さんに対して、循環器内科、脳神経外科、小児科の専門医をはじめ、各診療科の協力のもと診療にあたっています。患者さん自身では判断しかねる症状の対応について、病気の重症度、緊急度をもとに診療内容を決定し、必要な処置、診療科への紹介を行います。当院で対応困難な救急患者さんは大学病院に紹介し、より迅速で適切な医療が提供できる体制を構築しています。

総合診療と救急を学んで開業

当院の総合診療医や救急医のほとんどの方は、地域医療の臨床を経験しています。特に総合診療内科の医師は家庭医志向の方が多いので、地域の診療所の業務や患者さんへの対応をよく理解した上で診療に当たっています。地域に目を向け、地域との関わりを常に考えながら診療を行うスタッフが多いのが当センターの特徴でもあります。センター内の業務は地域の診療所の仕事と親和性があるようで、当センターで研修を受けた医師がこの地域で開業することも少なくありません。このようなことから地域の開業医の先生とは大変?良い関係を築いています。
急性期から外来、病棟入院患者の管理、地域との関わりまで幅広い業務を一通り経験し、得られた知識を生かして、将来的に地域で開業を考えているという方にとっては、理想的な学びの環境といえるのではないでしょうか。

大学病院との連携をリアルに実践

聖マリアンナ医科大学は、本院である聖マリアンナ医科大学病院、聖マリアンナ医科大学東横病院、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院、川崎市立多摩病院の4病院を運営し、それらが相互に連携、高度先進医療から地域医療までを担っています。当院は最新の総合医療情報遠隔診療システムを導入し、救急センターでは、必要時ICUや外来の患者さんの様子を大学病院からモニタリングできるようになっています。重篤だと思われる患者さんに関しては情報をあらかじめ大学病院に送り、状況によっては大学のドクターカーで迅速に転院搬送するケースもあります。
診療にあたって多くの医師が画像診断検査の読影で悩むこともあると思います。当院でも24時間対応できる放射線科医が現場に常時いるわけではありませんが、提携している大学病院のから放射線科医に当院の画像を確認してもらい、専門医の視点でコメントをもらうことが可能となっています。大学との連携を実臨床においてリアルタイムで実践しています。専門外のことを提携している病院の専門医に即座に確認してもらえるというのは大変心強いです。

アカデミックな活動や学位取得も

市中病院として臨床や教育の役割を担いつつ、大学病院としての研究や人材育成にも力を入れています。当院が大学病院の分院であるメリットとしては基礎研究から臨床研究までアカデミックな活動を行うための環境が整っているということです。とりわけ学位が取得できるのは大学病院だけなので、研修中に学位取得を希望されている方には特におすすめしたいですね。

子育て中の医師にも手厚い支援

将来、妊娠を検討中、または育児中、家族の介護といった、それぞれの事情を抱えている方にもライフスタイルに応じたフレキシブルな働き方ができるようサポート体制も整備されています。特に後期研修医の年代になると、年齢的にも子育てをしながら研修に参加されている方も多いです。女性医師だけでなく、男性医師でも育休を取得されている方もいますし、お子さんの具合が悪くなった時には病棟でお預かりするような仕組みや制度があり、無理なく研修に専念できるよう病院全体で支援しています。

僻地医療で救急医療の必要性に迫られる

私は祖父が故郷の田舎で医師をやっていまして、地域の人の役に立っている姿を見て育ち、医師を目指すようになりました。私は自治医科大学出身で、卒業後は出身県に戻って僻地医療に従事することになっていましたので、出身地である高知県の診療所などを転々としていました。地方には大病院が少なく、本当に具合の悪い人や心肺停止の人が突然診療所に運ばれてくることもあります。当時、私の地域には救急を勉強している医師が周りにいなかったことで、救急の知識が必要となる場面が何度もありました。救急診療に進んだ大学の先輩を頼って、千葉県船橋市の病院に研修で異動したことが救急に携わるようになったきっかけです。

期待が高まる救急総合診療領域

地方で様々なことを経験してきましたので、異動先の千葉県の病院でも総合診療的なことがある程度は通用していましたが、やはり知らなかったことも多く、勉強し直すことがかなりありました。ただ自分が地域でやってきた積み重ねが、大きな病院の中で生かされ「救急総合診療」という領域につながったのではないかと思っています。
救急の中でも一次二次の救急患者を中心に対応するERの医師は、いわゆるオーケストラで言うところの指揮者の役割で、自分では何も演奏しないと言われることがあります。患者にとってどの診療科につなげたほうが幸せなのかを常に念頭に置き、医学的な判断だけではなくてむしろ患者の社会的な背景まですべてを含めてマネジメントする必要があります。
救急総合診療の中心である二次救急の領域は、即座に人命にかかわる三次救急のようにドラマチックではないかもしれません。けれども患者さんに喜んでもらい、笑って帰ってもらえる時は嬉しくて、よかった思うこととほっとすることが原動力となっています。

好奇心旺盛な人に来てほしい

超高齢社会を迎え、これからは複数の病気を抱える患者さんがどんどん増えていきますので、総合診療と救急診療を専門とする医師のニーズはますます高まると思われます。両方の領域をバランスよく学びたい人にとって、当センターは様々な学びの機会を提供できます。「とにかく診て考えたい」という好奇心旺盛な人、そういう好奇心を自分で作り出そうとしている人には、大変興味深く面白い分野ではないでしょうか。
総合診療の領域は患者さんと診療科をつなぐコーディネーター的な役割を果たすことが多いので、コミュニケーション能力や調整能力も求められます。物事に固執しすぎたり、必要以上に自己主張が強い方には向いていないかもしれません。代々研修医同士も大変仲がよく、お互いに刺激し合いながら、一緒に考えを深めていける環境だと思います。幅広い経験を通してスキルや人間性を高めていくためにも、ぜひ学びに来てください。

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